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私の仕事は、始業前のメールチェックから始まる。
今日のアポイントや会議の時間を確認して、メールの返信をしていると、豊崎グループ長が、いつもながらの大きな声で話しかけた。
「紅、今日からリテールに来た白河だ」
横幅が大きいグループ長の後ろに、背の高い男の子が立っている。
「白河、入社して4年目の紅だ。
教育係だから、何でもわからないことは……。
紅に聞いてくれない?」
出たっ、グループ長のオヤジギャグ。
ウケることを期待しているのか、両手の人差し指を私に向けて、ニカっと笑っている豊崎グループ長に、私も新人の子も固まってしまった。
……はっ! いけない。
仮にも上司なんだから、新人さんの手前、こういう場面では豊崎グループ長を立てなきゃ。
「や、やだなぁ。豊崎グループ長、上手い事言うんですから」
引きつった笑いを浮かべた私のお世辞を、言葉通りに受け取った豊崎グループ長は機嫌よく笑って、自分のデスクへと戻っていった。
気を取り直して新人さんへ向き直る。
「紅 桃花です。よろしくお願いします」
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