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頭を下げて挨拶すると、ポニーテールに結んだ髪が、肩から前の方へ落ちてきた。
私はその髪を後ろに、はねのけながら頭を上げるが、白河君は背が高くて、グッと首を反らさないと顔まで視線が届かない。
だけど下から見上げたその顔は、大きな黒縁メガネと長い前髪で完全に目が隠れている。
うっすら開いたきれいな唇は、なぜかワナワナと震えていて、なかなか言葉が出ないみたいだ。
新しい部署で、緊張してるのかな?
「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ。
3か月だけになると思うけど、私がしっかり営業のことを教えるからね」
目は前髪に隠れてよく見えないけど、ジワリと口角を上げて、白河君はどうやら笑顔を作っているみたい。
「白河 真雪です……。
紅 桃花先輩、末永くよろしくお願いします」
ボソボソと小さな声で、ようやく挨拶した白河君は、その声量とはミスマッチにも、右手を差し出して握手を求めてきた。
う、うーん。
なんか、調子狂う子だな。
しかも、配属部署が正式決定するまでの、3か月だけだっていうのに『末永く』って……?
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