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差し出された大きな右手は、思ったよりも温かくて優しい手だった。
おずおずと握手に応えた私の小さい手を、白河君は両手で包み込み、嬉しそうに口元を微笑ませる。
リテールグループの朝の全体朝礼でも、白河君は小さな声で挨拶した。
「……小学生の時は算数が得意でした。白河 真雪です」
豊崎グループ長の隣に立つ白河君の顔と身体は、オフィスの端にいる私の方へと向いている。
ん? どういう挨拶の仕方なの?
ここは普通、先月までいた部署名を言うとか、じゃない?
ウケ狙い?
それ以上は何も言わない白河君の、か細い声に反比例するかのように、前髪に隠れた目から、なぜかギンギンに圧が伝わってくる。
っていうか、私のことすっごく見てくるな……。
一瞬、シーンとしたあと、戸惑ったような歓迎の拍手がパラパラと起こった。
そんな空気を破るように、白河君の何倍も大きな声で、豊崎グループ長が得意気に話し出す。
「なんと白河は、わが社の創業者である白河 太郎会長のお孫さんだ」
どよどよっとざわめきが広がった。
えぇっ? 会長の孫?
そんなの聞いてない!
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