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白河君は豊崎グループ長をチラリと見たあとに、下を向いてしまっている。
「あっ、すまん、白河。
このことは黙っておくんだったな。
まぁ、後でバレるより、最初に言ってた方がいいこともあるだろ?」
やっぱり、隠し事ができないらしい豊崎グループ長は、わざとらしく謝り、白河君の肩を叩いた。
周りでは白河君の素性を聞いて、ヒソヒソと何か話している人もいる。
「会長の孫だからって、みんな、白河を特別扱いとかナシだからな。
もちろんイジメるのも禁止だぞ」
快活に笑いながら大きな声で話している豊崎グループ長に、私はちょっと困った顔を向けたが、全然気づいてないみたい。
なんでグループ長は、こんな大事な情報を教えてくれなかったの?
このレイエスフーズを創業した白河会長は、私が就職するちょっと前に社長を退任している。
時々出社されているそうだが、私みたいな平社員は会ったこともない雲の上の存在だ。
会長の姿を見たのは、入社式で一度だけ。
壇上に座っていた、ロマンスグレーの素敵なおじい様が遠目に見えた。
今日から指導する後輩が、あの白河会長の孫。
私が教育係でいいのかな? なんだか緊張するよ……。
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