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「白河、よろしくな!」
豊崎グループ長がかけた声に、白河君は不愛想に黙ったまま、ちょこんと頭を下げた。
私はその様子を見て、ちょっと眉を寄せる。
いくら創業者会長の孫でも、やっぱり礼儀はきちんとしないと。
新人の3か月間だけとはいえ、白河君は今日から営業職だ。
挨拶や、会話はコミュニケーションの基本。
黙って頭を下げるだけなんて、態度がよろしくない。
これは注意しないといけないな。
さっそく教育係として指導する場面がきた。
だけど初っぱなから態度を指摘するだなんて、どう思われるだろうかと緊張感が増す。
『ウザい先輩』みたいに思われちゃうかも?
いや、教育係としてアドバイスするんだから……。
私の隣に配置された席で、パソコンを立ち上げている白河君に、勇気を出して声をかけた。
「あのね白河君、挨拶にはきちんと言葉で返すべきだよ」
白河君は、サラッと黒髪を揺らして私の方へ向く。
「上司に『よろしく』って言われたら、『よろしくお願いします』でしょ?
社会人として、挨拶できないと、どんな仕事も上手くすすまないよ」
ほとんど前髪に隠れて見えないが、あまり表情は変わっていない様子だ。
さぁ、白河君はどう反応する?
『パイセン、めんどくせぇ』って感じ?
それとも無視?
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