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おっと、ため息なんてダメダメ。
会社の方針に愚痴りたいけど、顔には出さないようにしなきゃ。
新人の白河君が、一番大変なんだしね。
私は任された仕事を頑張ろう。
「出来ました、紅先輩」
教育係としてのヤル気を、再び密かに燃え上がらせていると、私の長い髪に顔を近づけるように、白河君がボソリと声をかけた。
「うわぁっ! ビックリした」
「……驚かせてすみません。出来ました」
椅子から飛び上がった私に、白河君は少し下を向き、パソコンを指さす。
「え、あ、もう出来たの? 早いね」
ちょっと考え事していた間に、白河君は私が出した課題をやってのけた。
仮想のお客様を設定して作られた提案書や見積書は、何も修正する所がないほど完璧。
「わぁ、すごいね白河君。
もうこれお客様に出しても大丈夫なくらいだよ」
私がそう言うと、嬉しそうにジワリと口元を緩めていた。
「えっと、でもね」
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