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書類作成は花丸だけど、声のかけ方はバツだ。
「白河君はもう少し声を大きくして、ハッキリわかりやすく話しかけた方がいいかな。
忙しいスーパーや、業者さんが相手だから、小さい声だと話も聞いてもらえないと思うの。
営業は、『明るく、元気に、爽やか』が鉄則だよ」
緩んでいた口元は、再びきれいに閉じられて、しゅんとした様子がうかがえる。
人それぞれ、得意不得意があるし、声を出すのが苦手なら徐々に慣れればいいってフォローしようとしたら、私より先に白河君が口を開いた。
「……はい、わかりました。紅先輩。
これくらいの声の大きさでいいでしょうか?」
少し低くて優しい響きを持った声は、ボリュームもちょうど良く、ハッキリと聞きやすい。
元気に……って言うよりは、落ち着いた感じだけど、さっきまでと違って声にハリがあって、清々しく素敵なイケボだ。
私が指摘したことを、即行で直してくれる白河君に驚いた。
「うわ、白河君、ちゃんと爽やかだよ。
そうそう、そのくらいの声の大きさがいいね。
それに、すごくいい声してる」
私が褒めると、再びジワリと口角を上げている。
白河君って、教えたらすぐできるし、何でも素直に聞き入れてくれる、めちゃくちゃ優秀な後輩だな。
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