初めての新人指導は驚きの連続

22/22

81人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
「へぇ! いいね、お弁当。  お母さんが作ってくれるの?」 「……いえ、俺は一人暮らしなんで、自分で作ります」  白河君は大きな身体を曲げて、デスクの下に置いた黒いビジネスバッグから、スリムタイプのお弁当箱を取り出した。 「えっ、すごーい!   私も一人暮らしだけど、朝からお弁当作る余裕はないなぁ」  まるで、他の時間帯では料理をするような口ぶりで言ったけど、お弁当どころか、実はほとんど料理なんてしない。  だいたい外食か、冷凍庫にストックしているウチの商品を、レンジでチンして食べるのが私の日常だ。 「白河君、お料理できるんだね。  料理男子ってかっこいいよね」  つい出てしまった言葉に、白河君の表情が固まってしまったように見えた。    顔の半分くらいは見えなくて、よく分からないけど……。  もしかして私、失言だったかも。 「ご、ごめん。  初対面の先輩から『かっこいい』とか言われたら、ちょっとキモイよね。  あ、あぁー。早く社食行かなきゃ、座るところなくなっちゃう」  私は謝りながら、ごまかすように社員食堂へ向かった。  セクハラとか言われないように、気をつけなきゃ。  教育係って大変だな。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加