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「へぇ! いいね、お弁当。
お母さんが作ってくれるの?」
「……いえ、俺は一人暮らしなんで、自分で作ります」
白河君は大きな身体を曲げて、デスクの下に置いた黒いビジネスバッグから、スリムタイプのお弁当箱を取り出した。
「えっ、すごーい!
私も一人暮らしだけど、朝からお弁当作る余裕はないなぁ」
まるで、他の時間帯では料理をするような口ぶりで言ったけど、お弁当どころか、実はほとんど料理なんてしない。
だいたい外食か、冷凍庫にストックしているウチの商品を、レンジでチンして食べるのが私の日常だ。
「白河君、お料理できるんだね。
料理男子ってかっこいいよね」
つい出てしまった言葉に、白河君の表情が固まってしまったように見えた。
顔の半分くらいは見えなくて、よく分からないけど……。
もしかして私、失言だったかも。
「ご、ごめん。
初対面の先輩から『かっこいい』とか言われたら、ちょっとキモイよね。
あ、あぁー。早く社食行かなきゃ、座るところなくなっちゃう」
私は謝りながら、ごまかすように社員食堂へ向かった。
セクハラとか言われないように、気をつけなきゃ。
教育係って大変だな。
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