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「だから変なふうに噂が広まる前に、リテールのみんなには最初に会長の孫だって言っとこうと思ってさ。
紅には、先にこういう情報を伝えるとやりづらいかって、とりあえず本人に会うまでは言わなかったんだ。
ごめんな、ビックリしただろ?」
このリテールグループがいい雰囲気で、私も楽しく仕事が出来ているのは、豊崎グループ長のおかげだ。
たしかにあらかじめ白河君が『会長の孫』だって聞いてたら、余計緊張してたかもしれない。
さすが豊崎グループ長は、頼まれたら気負い過ぎる私の性格も分かっている。
「気遣っていただいて、ありがとうございます」
今日まで白河君の情報を教えてもらえなかったのは、そういう理由だったんだと納得した。
「白河会長が、ハッキリと言っているわけではないらしいんだが、孫のことを次期社長として考えているって噂もあって」
炭酸飲料をゴクリと飲んで、豊崎グループ長は背筋を伸ばす。
えっ! 白河君が次期社長?
「そうなると、まぁ……和田社長も色々辛い立場なんだろうけどな……」
いつもと違って歯切れが悪く、言いよどんだ豊崎グループ長は、何かを振り払うように浅く笑った。
和田社長が辛い立場?
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