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いろんなとこから刺さる視線を気にしながら、白河君に挨拶を返す。
「お……おはよう、白河君。
髪、切ったんだね。
メガネも……今日はコンタクト?」
「はい、昨日紅先輩から、目が見えた方がいいとアドバイスを受けたので、会社帰りに眼科と髪を切りに行ってきました」
昨日と違って、ハキハキと答える白河君に面食らってしまった。
なんか、急にサナギから蝶に変わったみたい。
「すごく似合ってるよ。
一晩でこんなに変わっちゃうなんて、魔法でもかけられたみたいだね」
私が褒めると、白河君は嬉しそうに首を横に振る。
「いえ、魔法じゃありません。紅先輩のおかげです。
紅先輩が俺のことをかっこいいと言ってくれたから、自分に自信が持てました。
紅先輩の横に立つのに、ふさわしい男になりたいんです。
それに……」
白河君はスーツのポケットから、昨日あげたヘアワックスの容器を取り出した。
結局、返してもらうの忘れてたな。
「俺、この紅先輩の香りで、何でも頑張れそうな気がします」
柑橘系の爽やかな甘い香りがする容器を鼻に近づけて、スゥーっと息を吸い込むと恍惚とした表情になった。
……あ、ちょっとヘンなところは変わってないか。
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