蝶になった白河君と飲み過ぎた歓迎会

2/28
前へ
/80ページ
次へ
 いろんなとこから刺さる視線を気にしながら、白河君に挨拶を返す。 「お……おはよう、白河君。  髪、切ったんだね。  メガネも……今日はコンタクト?」 「はい、昨日(くれない)先輩から、目が見えた方がいいとアドバイスを受けたので、会社帰りに眼科と髪を切りに行ってきました」  昨日と違って、ハキハキと答える白河君に面食らってしまった。  なんか、急にサナギから蝶に変わったみたい。 「すごく似合ってるよ。  一晩でこんなに変わっちゃうなんて、魔法でもかけられたみたいだね」  私が褒めると、白河君は嬉しそうに首を横に振る。 「いえ、魔法じゃありません。(くれない)先輩のおかげです。  (くれない)先輩が俺のことをかっこいいと言ってくれたから、自分に自信が持てました。  (くれない)先輩の横に立つのに、ふさわしい男になりたいんです。  それに……」  白河君はスーツのポケットから、昨日あげたヘアワックスの容器を取り出した。  結局、返してもらうの忘れてたな。 「俺、この(くれない)先輩の香りで、何でも頑張れそうな気がします」  柑橘系の爽やかな甘い香りがする容器を鼻に近づけて、スゥーっと息を吸い込むと恍惚(こうこつ)とした表情になった。  ……あ、ちょっとヘンなところは変わってないか。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加