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私のことをヘンなあだ名で呼んだ先輩に、白河君は迫力のある長身から、瞬間冷凍するような視線を送り、声をより一層低くして言った。
「じょ、冗談。冗談だよ、なぁ?」
前田先輩は周りにも同意を求めたが、茶化していたみんなも、白河君の凄味にシーンとしてしまう。
「冗談というには全く面白くないですし、それで紅先輩を傷つけていい理由にはなりません。
コンプライアンス委員会に報告してもいいんですね」
自分のことも『AIロボットみたい』なんて言われたのに、白河君は私に対する『ロリ巨乳』発言にだけ怒っている。
「ごめんなさい……」
会長の孫だというバックグラウンドを背負った白河君から、コンプラ違反だなんて言われた前田先輩は、バツが悪そうに謝った。
さっきまでみんなで楽しく騒いでたのに、リテールグループの卓はお通夜会場のように静まり返り、周りのお客さんたちの話し声まで聞こえる。
ま、まずい。
なんかフォローしないと。
だけど、とっさに言葉が出てこない。
前田先輩の軽口に傷ついたことよりも、再び白河君が私のことを守ってくれたのが嬉しくて、胸がいっぱいになった。
こんな風に、私をかばってくれた人っていなかったかも。
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