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「何とも思って、ないです」
「やった、じゃあ私、白河君のこと狙っちゃおうかなー」
「アハハハ、白河君22か23歳でしょ? 年下過ぎなーい?」
「だって、ゆくゆくは社長夫人になれるかもしれないじゃーん」
冗談めかして騒いでいる先輩たちに苦笑いしつつ、手にしていたビールグラスをあおる。
「あ、白河君、なんか逆ナンされてない?」
向こうでダーツをしている白河君たちに、とてもダーツをしにきたとは思えないようなピンヒールを履いた、3人の女性が声をかけているのが見えた。
「やっぱあれだけイケメンだとモテまくるよねぇ。
ホラ、紅ちゃんっ。白河君のとこに行かなくていいの?」
さっき白河君のことを狙おうかと言ってた婚活中の花岡先輩は、ニヤニヤしながら私をつついた。
「……いや、だって、花岡先輩。私はただの仕事上の教育係ですし。
白河君がモテまくってても、とやかく言える立場じゃないですから」
堅実に見えるグレーのスーツに、歩きやすさ重視の低いヒールのパンプスを履いたおチビの私が、あのキラキラ系女子たちの前に出ても何の効力もなさそうだし……。
私は低めのポニーテールに結んだ長い髪を揺らし、平然とした顔を作って口角を無理やり上げた。
だけど気持ちは重く沈んでいる。
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