蝶になった白河君と飲み過ぎた歓迎会

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 きもぢわるぅ。  飲みすぎちゃった。    お酒を吐くまで飲むなんて、これまでになかった。 「あ、すみません……」  なんとかトイレから出て誰かとぶつかり、身体を支えられる。  ぐわんと床が揺れるような感覚で、ぼんやりとした視界は夢のなかを歩いているみたいだ。  足がもつれて、千鳥足(ちどりあし)になる。  あー。  全部出しちゃったら、だいぶ楽になってきたかも。 「もう、帰りましょう」  背中を優しく(さす)ってくれている人がいる。  つぶやくように優しく話しかける、この人は誰だっけ?  低くて穏やかな男性の声で、心配されている。  私のことを心配する男の人……お父さん?  そういえば、吐いたら胃酸で歯が溶けるって、歯科医でもあるお父さんが昔言ってたな。 「ごめん、お父さん……。   ちゃんと歯を磨くから」  頭がクラクラするけど、歯磨きは大事。  おしゃれなタイル張りの洗面台に手をついて、肩にかけたバックを探って歯ブラシセットを出す。    フラリと後ろに倒れそうになったが、私をしっかりと支えてくれている大きな手に安心しながら、後ろの人に身を任せた。
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