95人が本棚に入れています
本棚に追加
きもぢわるぅ。
飲みすぎちゃった。
お酒を吐くまで飲むなんて、これまでになかった。
「あ、すみません……」
なんとかトイレから出て誰かとぶつかり、身体を支えられる。
ぐわんと床が揺れるような感覚で、ぼんやりとした視界は夢のなかを歩いているみたいだ。
足がもつれて、千鳥足になる。
あー。
全部出しちゃったら、だいぶ楽になってきたかも。
「もう、帰りましょう」
背中を優しく擦ってくれている人がいる。
つぶやくように優しく話しかける、この人は誰だっけ?
低くて穏やかな男性の声で、心配されている。
私のことを心配する男の人……お父さん?
そういえば、吐いたら胃酸で歯が溶けるって、歯科医でもあるお父さんが昔言ってたな。
「ごめん、お父さん……。
ちゃんと歯を磨くから」
頭がクラクラするけど、歯磨きは大事。
おしゃれなタイル張りの洗面台に手をついて、肩にかけたバックを探って歯ブラシセットを出す。
フラリと後ろに倒れそうになったが、私をしっかりと支えてくれている大きな手に安心しながら、後ろの人に身を任せた。
最初のコメントを投稿しよう!