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「あ……そうか、白河くん……」
ダーツバーの薄暗い洗面台の鏡には、私の後ろから心配そうに見守る白河君が写っている。
いつも仕事の時に使っている歯ブラシセットで、私は歯磨きしながら、ぼんやりと考えた。
自分がヤリたい時だけ連絡してくる、彼氏の駿哉さんだったら、こんな時は絶対私のことを放っておきそう。
白河君は後輩なのに、彼氏よりも彼氏っぽい……いや、お父さんっぽい?
歯磨きをして、口の中はさっぱりしたけど、全然眠気はとれないし、頭の中はフワフワしたまま。
「……お父さん、大きい」
酔っぱらった頭のせいで、夢なのか現実なのか、お父さんなのか白河君なのかよく分からなくなった私は、目の前の大きな身体に抱きついた。
普段なら、公共の場で人に抱きつくなんて絶対にしない。
お酒って怖い。
温かくて、しっかりとした胸板に包まれて、私はそのまま眠ってしまった。
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