平凡魔女の私ですが、引越しセンターをはじめます!

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「おやおや、大変だったね。それじゃあ晩御飯にしようかね?」そういうと下宿のおばちゃん―――天海(てんかい)やす子―――は晩飯の用意してくれた。  やす子さんの年齢は60代ぐらいだろうか? もっと若いようにも見える。年齢不詳だが話の内容などから察すると60代ぐらいだろう。エルルのような西洋人からすると東洋人の年齢は判別が難しい。  晩飯が終わったら風呂に入って、ビールを飲んで就寝―――というわけにはいかない。未成年ということもあるが夜は魔力を上げるためのトレーニングに適した時間帯なのだ。また、魔術の勉強等で忙しい。魔女は基本的に夜型人間が多いのはこれが理由である。ただの夜更かし好きではない。断じて。  エルルたちのトレーニング場所は近所の池がある大きめの公園、井の駄菓子公園だ。さすがに深夜は誰もいない。 「カ―――」夜は目がよく見えんのだがなぁ。エルルさんよぉ。そろそろ使い魔としての黒猫とかどうなんだい? え? 魔力不足で従わせることができないって? だいたい普通は黒猫を使役してからカラスでしょうが。配送業をするつもりだったから飛行ができるカラスの方が都合が良かったって? はい、はい。別にいいけどよぉ。確かに飛行魔術だけは他の学生より出来がよかったもんなぁ。魔術学校のアイルトン・セナ、シューマッハ、マンセルなんて呼ばれていたし。どれも知らない? まぁ、教師陣が言っていただけだからなぁ。いや、俺も知らねぇよ? 「ミ―――」  などと、いつも通りにクールエは饒舌だ。しかしである。 「クールエ。ミ―――はおかしいわよ? 猫の声真似って、なんかの当てつけかしら?」 「カ―――」は? ちげぇし。俺はミ―――とは言わねぇし。よく見えないけど近くに猫でもいるんじゃねぇのか? よく見ろYO!  なんで最後だけラップ調なの? と思いながらエルルは周囲を見渡す。すると池の傍に設置されているベンチの下で蠢くものがある―――白い仔猫だ。 「あなた、どこから来たの?」「ミ―――」エルルは言葉を解そうとするもなかなか意志の疎通が図れない。 「あれ? おかしいなぁ」 「カ―――」あれぇ? 魔女様ともあろうお方が猫の言葉がわからないのですか? こりゃ魔力以前の問題でやんすねぇ?  クールエが茶化してくるがエルルは無視する。魔女が猫の言葉がわかないということはない。カラスや猫と意志の疎通を図る場合、人間の使用する言語様式とは異なる。それは脳に直接的に働きかけるもの。となると―――。  エルルは仔猫を優しく抱きかかえた。お腹を空かせているのかエルルに擦り寄ってくる。  エルルはバックの中に入っていたクッキーを与えてみた。猫がクッキーなんて食べるかなと思ったが、平らげて「ミ―!」と元気よく鳴いた。  その姿は仔猫らしく愛らしい。 「クールエ。ちょっとエリカのところへ行くわよ」そういうとエルルは幼馴染で同級生であったエリカ・アベの家へと向かった。
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