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 そんなことで、巧はうっかり美術部に入ってしまった。  しかし、美大志望の川瀬部長は自分の絵に真剣であまり構ってくれないし、二年生は女子ばかりだから、なんとなくやりにくい。  今のところ、他の新入部員は入ってこない。  一週間もすると、巧は部活に行くのが億劫になっていた。  ーーやっぱり僕、部活とか向かない気がするんだよねー。  と、誰もいない教室で、自分に愚痴を言ってみる。  美術室に行きたくなくて、意味もなくスマートフォンをいじっていた巧は、突然、「心臓が止まりそう」という文字通りの経験に襲われた。  グサリとナイフを刺されたような痛みが、心臓を突き抜ける。  ーー嘘。嘘でしょ!?  何気なく開いたSNSのニュースに、こんな文字が載っていた。 「『ワーフェア』キャラデザ・ミズハラナオミさん急逝」  何度見直してもそう書いてある。 「嘘だ……」  スマートフォンを持つ手が震える。心臓が締め付けられるように痛い。涙で視界が滲むのを抑えられない。  ーーなんで?  理由や原因はわからない。ただ、その朝、ご家族が亡くなっているミズハラさんを見つけたということだけが書かれていた。  机には、描きかけのラフ画がそのまま残されていたということだ。六十歳だった。  ーー信じられないよ。  巧は呆然としたまま、席に座り込んで、スマートフォンを握り締めていた。  どれほどそうしていたのか、自分でもわからない。
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