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「巧はどうしたの」
と、夕飯の席についた匡久は奏に訊いた。
ダイニングテーブルの巧の席には、空のままの綺麗な飯碗とコップ、お皿が置いてある。
「食べたくないんだって」
匡久のおかずを皿によそいながら、奏は答える。
匡久は驚いた。
「え? 巧がごはんを食べないって? どうしちゃったの。具合悪いの?」
「これだよ、お父さん」
奏はパジャマのポケットからスマートフォンを出して、SNSのニュース記事を匡久に見せた。
「何これ? 誰か亡くなったの?」
匡久の質問に、奏は一瞬、呆れたような顔をする。奏にそんな顔をされたのは初めてだったので、匡久は戸惑った。
「巧くん、このイラストレーターさんのすごいファンなんだ。ショックで泣いてたよ」
奏がそう説明したが、匡久にはピンとこない。そんなことで? という思いが頭をよぎる。
「でも、それでごはんも食べないなんて、体に悪いだろ。お父さん、呼んでくるよ」
「やめたほうがいいよ」
「そんなこと言ったって、夜中に絶対おなか空くぞ」
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