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 学校でも、ミズハラナオミの死は話題になっていた。  でも興味本位の噂話のようで、巧はその会話の輪の中に入ることができない。  朝のホームルームの前に巧が机でぼんやりしていると、メッセージアプリの通知が入った。奏からだ。何だろ、と開けてみる。 『巧くん、お弁当作ってきたけど、教室に持って行こうか?』  やば、と巧は思う。  今日のお弁当当番は巧だったのに、気分が乗らないという理由だけで作らずに来たのだ。それを、兄は自分の分まで作ってくれた。  昨日も、おにぎりを部屋の前に置いて行ってくれたのだった。 『ありがとう。ごめんね、奏くん。お昼に取りに行く。サボってごめんなさい。』 『気にしないで。じゃあ、待ってるね。』  兄からの返信はそれだけだった。  奏は誰も責めない。  ーー僕も、奏くんみたいになれたらいいのにな。
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