Standing

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　いよいよ入学式が終わって、新学期が始まった。

　放課後、巧は『入部届』と書かれた用紙をヒラヒラさせながら、部活どうしようかなぁ、と考える。
　本当は、どこにも入りたくないのだ。
　でもこの学校では、新入生はなんらかの部活に入らないといけないと決まっている。

　ーーやっぱり運動部はパスだよなぁ。

　巧は運動自体は嫌いではない。運動神経も良いほうだ。

　ーー部活なんかに時間を取られることがイヤなんだけど。

　放課後は、すぐに帰ってゲームをやりたい。
　巧は将来、ゲーム・クリエイターになりたいのだ。

　それに最近、巧は父の許しを得て、画像投稿SNSにイラストの投稿を始めた。
　学校には持っていかないという約束で、イラストを描くためのタブレットとペンも買ってもらった。
　今はそれにハマっている。
　非公開アカウントにする約束だから、新規のフォロワーさんはそんなに増えないけれど、好みのイラストを描く人をフォローすると、時々フォローバックのリクエストが来たりして、承認すると巧のイラストにコメントを残してくれる人もいる。もちろん、お礼の返事を書く。そんなやりとりが楽しいのだ。
　そのSNSでは、絵のキャプションにけっこう長めのコメントが書けるので、巧はオリジナルイラストにキャラの設定文を書いたりしている。そこに反応してくれる人もいて、それは本当に嬉しい。

　時間は、そういうことに有効に使いたい。
　運動部で球拾いなんかに時間を使うのは、巧にはバカバカしいことに思えた。