Standing

12

　それから一か月が経とうとする頃、巧の心の傷もだいぶ癒えていた。

　ーーピーンチ！

　日曜日の午後、巧は部屋でゲーム雑誌の広告欄を見ながら、頭を抱えた。
　今月、巧の大好きなRPG『ワールド・オブ・フェアリーズ』の新作『16』が出る。
　ミズハラナオミのキャラクターデザインで作られた『ワーフェア』は、これが最後になる。絶対に発売日に手に入れたい。

　そして来月、これまでの『ワーフェア』シリーズのキャラクターイラストを集めた『完全版イラスト集』が大判本で出るというのだ。
　これも絶対に欲しい。だが、六千円は高い。
　しかも、『16』のサウンド・トラックCDが、ミズハラナオミ新作イラストのジャケットで発売され、遺作ともいえるラフ画が収録された特別装丁版が出るらしい。

　ーー全部欲しい〜〜！！

　お小遣いが大ピンチだ。
　巧は広げた雑誌の上にぱたりと頭を落とした。そして唐突に、

　ーーそうだ！

　と起き上がる。

　部屋を出て階段を駆け下りると、サンダルを突っ掛けて隣の家に急いだ。