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実力テストは、実力で受ける主義だ。
だから巧は、テスト勉強をしなかった。
この高校では、土日を使って大手予備校の模擬試験を受けさせられる。全員強制参加だ。
きっと、田舎すぎて大手予備校が周りにないからだろう。
入学して初めて受けたそのテストには、志望大学と学部を書く欄があった。
巧はそんなことを、まだ全然決めていない。どんな大学に何学部があるのかも知らない。
でも、祖父の話はずっと頭に残っていた。
ーーそれに、僕の成績なら、どうせ書くなら医学部だよね。医学部って、たしか偏差値高いんでしょ?
大学の名前もよく知らなかったので、一番有名な「東京大学」を第一志望にした。「理科三類」という分類も知らなかったし、医学部に医学科以外があるのも知らなかったから、「東京大学医学部」と堂々と書く。
第二志望は、母が教育学部を出たK大医学部、第三志望は父が出た県内のN大医学部を書いた。
そして、模試の結果が返ってきた。
ーーちょっと! 僕って天才じゃない!?
巧はたちまち舞い上がった。
なんと東京大学理科三類に、B判定が出たのだ。K大とN大はA判定だった。
志望学部は、たぶん先生が書き直してくれたのだろう。
ーー僕、絶対お父さんより頭いいよ!
父がどんな顔をするか楽しみで、巧は一日ずっとニヤニヤしていた。
もしかしたら、お小遣いをアップしてくれるかもしれない。
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