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「調子に乗らないの」
巧は父からデコピンを食らった。
「今は良くても、君みたいに勉強しない子は、三年後には絶対努力した人に追い抜かれて、悔しい思いをするんだよ。これからどんどん勉強は難しくなるんだから」
「何それ。ヒガミー?」
「なんでお父さんが君をひがまなくちゃいけないんだ。水戸黄門の歌にもあるだろ」
「そんなの知りません」
「……動画配信サイトで探しなさい」
「イヤですー。昭和のおじさんの説教は、もういいです。せっかく喜ぶと思ったのにー」
「……。それは嬉しいけど。だいたい君は、医学部には行かないって言ってたじゃないか。ゲームを作るんじゃなかったの?」
「だってー。僕の成績じゃ、専門学校なんて、どこもA判定に決まってますもん。そんなの面白くないよ」
「またそんな理由で」
父はまたデコピンを食らわす。
巧は言った。
「お父さんは、僕が医学部に行くのが嬉しくないの? 病院を継ぐ人がいないと困るんでしょ?」
父のデコピンを、巧は今度は両手で防御した。
「あのねえ、巧。自分の将来をもっと真剣に考えなさい。それにお父さん、今の巧には、全然病院を継いでほしくありません。そんな主体性のない理由で継がれても、後が迷惑なんだよ。患者さんのためにも地域のためにも、病院のスタッフのためにも全然なりません! 医者になんかならないでください」
ーー何ですとー!!
巧はショックを受けて怒った。
「いいもん、おじいちゃんに褒めてもらうから! おじいちゃんは僕に医者になってほしいって頼んだよ!」
匡久はにわかに顔をしかめた。
「何、その話は。お父さん、知らないよ?」
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