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匡久は病院の昼休み、休憩室で奏の作ってくれた弁当を食べながら、画像SNSを開いた。
彼はSNSには興味がないので、フォローしているのは息子の奏と巧だけである。
次男の巧はまた新しい画像を投稿している。
彼の頭の中には、独自のファンタジー世界があるようで、そのイラストとキャラクターの説明が長々と文章で綴られている。
親が見ているとわかっているのに、これだけ頭の中の妄想を暴露できるのは、ある意味すごいことだよな、と、匡久は妙なところに感心する。
巧には高校の合格が決まってから初めてSNSへの投稿を許したのだが、春休みの間に猛烈な勢いでイラストが増えた。
高校からはオリエンテーションの際に、膨大な量の春休みの宿題が出ているはずなのだが、本当にちゃんと勉強したのだろうかと心配になる。
奏にも巧にも、今はまだ非公開アカウントにするように言ってあるのだが、巧はフォローリクエストが来ると、すぐに承認してしまう。そして何度も公開アカウントにしたいとねだってくる。
巧のイラストは匡久の予想をはるかに超えて上手くて、漫画家になれるんじゃないの、などと思うこともあるのだが、それは親の欲目なのだろう。
巧にそう言ったら、彼には珍しく謙遜して、「僕は背景が描けないから無理だよ。これくらい描く高校生はたくさんいるよ」などと言っていた。
今日、新しく投稿されている絵は、二人の少年が肩を組んで笑っている絵だ。
それには、小説とも言えない、セリフばかりの掛け合い漫才のようなショートストーリーが添えてある。
巧らしいお話だな、と匡久は思い、微笑ましくて、くすりと笑った。
巧には案外、文才もあるのかもしれない、などと、また親バカぶりが頭をもたげてくる。
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