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21
日曜日、昼食を済ませてから、巧はずっとダイニングで時間を持て余していた。
久しぶりにリュウが来ると思うと、何だか『ワーフェア』も手につかない。
もちろん、試験勉強なんてする気にもならない。
お菓子とコーラは用意した。リュウはコーラが好きなのだ。
グラスもお客さん用のを二つ、ちゃんと磨いてあるし、お盆も出して拭いた。
落ち着かないので、巧は見るともなく、居間の大きなテレビで奏がやっている『ワーフェア16』の画面を見ている。
居間で新聞を読んでいる父は渋い顔だ。
「君たち、試験勉強をしようって気にはならないの?」
と問われるが、なるわけがない。
ついに一時ちょうど、インターフォンのチャイムの音がした。
モニターを見もせずに、巧は玄関に走り、ドアを開けた。
「リュウ、久しぶり!」
「お、おお」リュウは少し驚いた顔をする。
「上がって、上がって。お父さんも奏くんもいるんだよ」
リュウが靴を脱ぐのを待って、巧はリュウを居間に引っ張っていく。
「お邪魔します」
と、リュウは、かしこまって父と奏に頭を下げた。
父は微笑んで、
「リュウくん、少し見ない間に大人びたなぁ」
と言う。
奏も「久しぶりだね」と笑った。
小学生の頃から、中学までよく遊びに来ていたリュウのことは、父も奏もよく知っている。
それに奏が中三の時には、リュウも奏も巧も生徒会役員で、よくいろんな話をしていた。
「部屋に行こうよ。お菓子持ってくれる? コーラ買っといたんだ」
巧はリュウをダイニングに連れて行き、いくつかの袋菓子を押し付けて、自分はコーラのボトルとグラスを置いたお盆を持った。
二階に行こうとすると、
「ごゆっくり」
と父と奏が笑って言った。
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