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進路のことを考えなければいけなかった。
夏休みが終わると、三者面談があって、その後、文理選択を決めなければならない。
巧の学校では、文系か理系か、二年生のクラス分けで分かれてしまうのだ。
奏は当然、迷うこともなく理系に進んだけれど、巧はまだ迷っている。
巧はスマートフォンをいじり、「人を助ける仕事」という言葉を漠然と調べてみたが、出てくること出てくること。
しかしその中には、医療か福祉関係の仕事が多くて、あまり惹かれない。
世の中みんな、人を助ける仕事をしたい人ばかりなのかなぁ、と巧は思う。
でもその中に、巧がやってみたいと思う仕事はないのだ。
ーー僕、何がしたいのかなぁ。
また、大手予備校の模試が来週末ある。
今度はまじめに勉強しようと思い、巧は机に向かう。
今度は、志望校もまじめに書きたい。
机の上の書棚には、資料請求した大学のパンフレットがたくさんある。
それを見るにつけ、巧はますます志望学部を絞れなくなり、どれも勉強したいと思ってしまう。
ーー僕、本当は勉強嫌いじゃないんだよね。
勉強はけっこう楽しいのだ。
でも、医学部にはあまり興味がない。
経済とか政治とかがいいかなぁ、と、巧は漠然と思っている。
そういうものを勉強したら、経済的に困っている人を助けられるんじゃないだろうか。
ーーそうだ。
今度は、「貧しい人を助ける仕事」と入力して検索してみた。
何だか、しのぶを「貧しい人」と断じているみたいで嫌だったが、その検索結果に、巧は心惹かれた。
「貧しい子どもを助ける仕事」というのがたくさん出てきて、その中に「スクール・カウンセラー」という文字があったのだ。
「スクール・カウンセラー」という資格はないらしい。
しかし、臨床心理士や精神科医といった資格のある人がなれるらしかった。
ーー精神科医。
医師の仕事は自分に向かないと思っていた巧だけれど、なぜか精神科医には心惹かれた。
ーーお父さんの病院には、認知症の人もたくさんいるし……。精神科医になって、そういう人のサポートを学んでもいいのかもしれないな。
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