24

1/1
前へ
/56ページ
次へ

24

 進路のことを考えなければいけなかった。  夏休みが終わると、三者面談があって、その後、文理選択を決めなければならない。  巧の学校では、文系か理系か、二年生のクラス分けで分かれてしまうのだ。  奏は当然、迷うこともなく理系に進んだけれど、巧はまだ迷っている。  巧はスマートフォンをいじり、「人を助ける仕事」という言葉を漠然と調べてみたが、出てくること出てくること。  しかしその中には、医療か福祉関係の仕事が多くて、あまり惹かれない。  世の中みんな、人を助ける仕事をしたい人ばかりなのかなぁ、と巧は思う。  でもその中に、巧がやってみたいと思う仕事はないのだ。  ーー僕、何がしたいのかなぁ。  また、大手予備校の模試が来週末ある。  今度はまじめに勉強しようと思い、巧は机に向かう。  今度は、志望校もまじめに書きたい。  机の上の書棚には、資料請求した大学のパンフレットがたくさんある。  それを見るにつけ、巧はますます志望学部を絞れなくなり、どれも勉強したいと思ってしまう。  ーー僕、本当は勉強嫌いじゃないんだよね。  勉強はけっこう楽しいのだ。  でも、医学部にはあまり興味がない。  経済とか政治とかがいいかなぁ、と、巧は漠然と思っている。  そういうものを勉強したら、経済的に困っている人を助けられるんじゃないだろうか。  ーーそうだ。  今度は、「貧しい人を助ける仕事」と入力して検索してみた。  何だか、しのぶを「貧しい人」と断じているみたいで嫌だったが、その検索結果に、巧は心惹かれた。  「貧しい子どもを助ける仕事」というのがたくさん出てきて、その中に「スクール・カウンセラー」という文字があったのだ。  「スクール・カウンセラー」という資格はないらしい。  しかし、臨床心理士や精神科医といった資格のある人がなれるらしかった。  ーー精神科医。  医師の仕事は自分に向かないと思っていた巧だけれど、なぜか精神科医には心惹かれた。  ーーお父さんの病院には、認知症の人もたくさんいるし……。精神科医になって、そういう人のサポートを学んでもいいのかもしれないな。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加