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「ええー! お父さんが旅行ー!?」  巧と奏は、目を丸くして父を見た。 「ただの旅行じゃないよ。オープン・キャンパスって言って、大学を見に行くんだよ」 「それでも、飛行機に乗って行くんでしょ? そんなことして大丈夫なの?」  奏が心配そうに言う。 「大丈夫だよ。病院はさ、郁ちゃんのお父さんとか、みんないてくれるから」  そう言われても、巧は信じられない思いで父を見る。 「だからさ、行きたい大学のイベントの日を君たちが探して、日程を立ててみて。お父さん、それに合わせて休みをとるから」 「飛行機なんて、乗ったことないよ」  と奏が言う。 「だから、練習の意味も兼ねて行くんだよ。かなくんは来年、受験でしょ。その時は、一人で飛行機に乗って、ホテルに泊まらなきゃならないんだからね」 「う、うん」 「でも、お父さん」  と巧は言った。 「僕たち、夏期補習あるんですけど」  高校の夏期補習は、全員必修だ。  しかし父は言う。 「夏休みの間は、授業は進まないだろ。何日か休んだって平気だよ」  巧は驚いた。  あのカタブツの父が、そんなことを言うなんて。
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