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「巧くん、SNSとかやらないの? 絵、見せてよ」 「うーんと」  巧は、栞菜に自分のSNSのアカウントを教える気になれない。 「あ、そうだ。これです」  ちょうど思い出して、今日の数学の授業ノートを広げて見せる。  計算練習の時間があまりに長くて、さっさと終わらせた巧はヒマを持て余したので描いた、オリジナルキャラの顔だ。 「私にも見せて」  と、しのぶも首を伸ばしてくる。  他の二年生と川瀬部長は興味がないようで、それぞれ自分の作業に没頭している。 「わ、すごい」  と、しのぶが呟き、わくわくしたような眼で巧を見て言う。 「もしかして、『ワーフェア』とか好き? ミズハラナオミの絵に似てる!」 「あ! そうなんです! わかります!? 僕、ミズハラナオミさんの絵、小学生の頃から大好きで、ずっと真似してるんです! 『ワーフェア』も、シリーズ全制覇してます!」  巧が興奮して言うと、しのぶも満面の笑みで「私も!」と叫ぶ。今までの大人びた表情はどこへやら、年相応の女の子の顔だ。  『ワーフェア』というのは、『ワールド・オブ・フェアリーズ』の略称で、ハードの進化に合わせて何十年もリメイクされている、巧の大好きなロールプレイングゲームのシリーズだ。ミズハラナオミは、その初代から今でもキャラクターデザインを手掛けているカリスマ的なイラストレーターだった。
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