猟犬達の住み処

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 今にも殴り掛かろうとするバージルを、エリヤは慌ててシャノンから引き離した。  それでも、バージルはシャノンに向かっていこうとする。 「お前はただっ! 空席になった席に座りたいだけだろ!」  本当に噛み付きそうな勢いで喋るバージルを、シャノンは軽くあしらった。 「No.1の席が空いたなら、繰り上がるのは当然だ。お前も、今のままだと下がるぞ。任務に出ずに雑用ばかりしてるんだからな。いい加減新しい相棒作って任務に出ろ」 「俺はあいつが起きんの待ってんだよっ! 俺の相棒はあいつだけだ! 相棒を代えてまで今の席に縋るつもりはねぇ! 俺はあいつが目覚ますまで相棒も代えねぇしっ、任務にも出ねぇぞ!」 「役立たずは二人も要らない」 「何だとっ!?」 「バージル、落ち着いて」  二人の目線を合わせておくのは得策じゃないと感じたのか。エリヤは強引にバージルの体を自分の方に向けた。 「私も、シャノンが同じ様になったら……彼が起きるまで君みたいに待つと思うんだ」  穏やかなエリヤの声は少しだけバージルの怒りを削いだ。  しかし、語られる言葉は少しずつバージルを追い詰めていく事になる。 「でも、考えてみてくれ。この状態がいつまで続くかは、君もわからないだろ? 君は、任務に出ない代わりに料理や掃除をしてくれているけれど……彼の看病の為に睡眠時間を削っている。たまに欠伸をしているのを見るよ」 「そ、それは……別に寝てねぇってわけじゃねぇし」  図星で、とてもわかりやすく目を泳がせるバージルに、エリヤは口撃を止めない。 「このままだと君も参ってしまうよ」 「んなことはっ!」 「彼を待つにしても。私は、医療設備が整った場所にレックスを一度移すべきだと思っている。その方が、目覚める確率は大きいんじゃないかい?」 「っ!」  最もな言い分にぐうの音も出ない。そわそわしながら頭を働かせ、打開策を探す。  けれど一度相棒と離れれば、二度と会えなくなるんじゃないか。そんな未来ばかりがちらついてしまう。  二人を納得させる様な良い答えも浮かばない。
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