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敷地内で、鍛練等を終えた猟犬達が戻ってきた。
ダイニングの長机を皆で囲み、全員で昼食を取るが、空気は重い。
何事もなかった様に食べているのはバージル、シャノン、ジジイの三人だけ。
他のNo.持ちや非戦闘員の三人は気まずさを感じつつも、話す勇気はなさそうだった。
それに、談話室で優しげな表情をバージルに見せていたエリヤも、心ここに在らずな珍しい顔。食も進んでいなかった。
それが更に喋りにくい空気を作り出している気もする。
先程も自分と接していたのに、変化が急で。バージルも気になった。
エリヤの相棒であるシャノンは気にしていない様子だ。というより、何かあっても皆の前で深い会話をする事はほとんどないから、それは珍しくない。
この様な雰囲気を作った一因でもあるバージルは、少しずつ前を向く意味合いも込めて踏み込んだ。
「エリヤ……どうした?」
静かな室内で呼ばれたエリヤは驚いていた。けど、すぐに失敗を誤魔化す様な笑みを作った。
「あ、ううん。なんでもないよ。上の人から連絡が来て、ちょっとね」
「……レックスの事か?」
その名前を聞いたシャノンとエリヤ、ジジイ以外は一瞬表情を強張らせた。
寄宿舎に猟犬は十人。強さによってNo.1からNo.10までNo.を割り振られている。
軍への報告や任務の受託、メンバーの管理等は全部No.1の仕事だった。
現No.1のレックスがあの状態になってからは、No.3のエリヤが引き継いでいる。
本当はNo.2のシャノンが引き継ぐ予定だったが、適任者はエリヤだと皆の意見で決まった。
シャノン自身も自分には向かないと、最初からエリヤに仕事を投げていた。
だから彼の負担が大きいんじゃないかとバージルは見ていたが、エリヤは首を横に振った。
「いや、別の件かな。でもこっちで処理するから、大丈夫だよ」
彼の隣に居たシャノンが、ちらりとエリヤを見ていた。
多分、自分よりも相棒が話を聞いた方がエリヤも安心する。だからそれ以上は突っ込まなかった。
すると、エリヤは笑顔を一段階明るくさせた。声を弾ませ、素早く切り替えた様子だ。
「そういえば今日、街の人がスコーン届けてくれるって。後で皆で頂こうね」
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