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後列の方では、座り込んでしまった非戦闘員の二人をジジイが抱き締め、視界を覆っていた。
良き理解者に助けを求めたかったが表情もわからなくて、声は掛けられなかった。
「バージル……大丈夫だから……落ち着いて話そう?」
やっと声を出せた様子のエリヤは、普段通りの優しい彼に思えたけど、表情は緊迫していた。
レックスとの別れを惜しんだバージルが、衝動的に起こした事。錯乱しているだろうから、刺激しない様にしないと。
そんな感情が、彼の表情から読み取れる様だった。落ち着ける訳がない。
「違うっ! エリヤ! 俺は何もっ!」
「寄るな」
無実を訴えたくてエリヤに詰め寄ろうとすると、冷たい瞳をしたシャノンが立ちはだかった。
「退けっ! お前はどうせ信じねぇだろっ! 俺はっ……!?」
右肩を掴まれたと思うと、左肩にチクリとした痛みが走る。見ると、肩には注射器が刺さっていて、シャノンの手で薬液を注入されたみたいだった。
すると、身体に力が入らなくなり、バージルは前方へ倒れ込んだ。
それをシャノンが支え、バージルは力なく彼の方を睨む。
「っぅ……シャノン……」
「吸血鬼を捕える時に使う麻酔薬だ、寝てろ」
「……さっきも寝てたんだよっ……ぅ……」
頭がぼーっとして、何も考えられなくなった。シャノンがこちらを向いたけど、視界も定まらなくなって。
「くそっ……」
バージルは強制的に意識を手放した。
レックスの死を悲しんで、涙を溢しながら。
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