30人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ! お前っ、それどうしたっ!?」
足取りはおぼつかない様子で、移動は壁を伝いながら。
それに、衣服は真っ赤に染まっている。何度も刺されたらしい深い傷が遠目でも確認出来た。
立って歩けているのが不思議なくらいの重傷だ。
バージルの元に辿り着いたNo.10は崩れる様に膝を着き、震えた手付きで手錠に鍵を差し込んだ。
バージルの手首が自由になると、消えてなくなりそうな声で彼は告げる。
「血の匂いを嗅ぎ付けて……吸血鬼が……敷地内に入ってきた」
「えっ!?」
吸血鬼達は夜になると動きが活発になる。レックスが死んだタイミングが悪かったんだろうか。
それでも、猟犬が大勢居る屋敷に吸血鬼が来るのは自殺行為に近い。知能の低い下級か、よっぽど強さに自信のある中級の命知らずか。
どちらにしろ、前例のない危険な状況には変わりなかった。
「お前は逃げろ……シャノン達が帰ってくるまで……多分もたな……っ」
「え……おいっ! しっかりしろっ!」
限界を越えていたらしいNo.10は、詳細を告げぬまま床へ倒れ込んだ。
震える手で揺すっても、目を覚ます事はなかった。
「なんでっ! っぅー!」
No.持ちのメンバーの中で1番下位だが、彼は決して弱くはなかった。自分と同じく、相棒のサポートに付いて切磋琢磨していた仲間だ。
一緒に暮らしていた奴が目の前で突然動かなくなり、胸を貫かれたみたいな衝撃があった。
けれど、ここでおとなしくはしてられない。
唇を噛み締め、強い怒りを滾らせながら、バージルはドアの方を睨んだ。
立ち上がって、素早く愛用のライフルを手にする。
引き出しにあった弾倉をライフルに装着。素早い動きでボルトハンドルを前後上下に操作し、銀の弾丸を装填。
替えの弾倉はウエストポーチに忍ばせ、太もものホルダーにナイフを差した。
「よしっ」
戦闘態勢を整えると縦に銃を持ち、駆け足で壁に背中を張り付ける。
そして、半開きだったドアを勢い良く蹴り開き、廊下に出た。
銃口を階段側に向けるが、誰も居ない。
安心はせず、神経にピンと糸を張る。
緊張感を持ち続けながら全部のドアを開け、注意深く中を確認した。
最初のコメントを投稿しよう!