闇に堕ちた先

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 自分と、見回りに出ている四人。それから、もうこの世には居ないレックスとNo.10を抜かせば、屋敷に居る猟犬(ハウンド)は三人。  それから非戦闘員の三人とジジイが居る筈だが、部屋には居なかった。  屋敷近くに吸血鬼が出た場合、非戦闘員達は一階のシェルターに避難する事になっている。  扉の装飾に、吸血鬼の弱点である銀が使われた部屋で。内側には頑丈な鍵も付いている。  そこに立て籠って居れば、一先ずは安心だが。 「全員殺られた訳じゃねぇよな……」  レックスやNo.10の最後の姿が目に焼き付いている。それが不安を煽った。  姿が見えない仲間達を探す為、バージルは二階へと降りて行く。キッチンとダイニング、応接室、執務室、談話室がある階だ。三階と比べると部屋数は少ない。  今は明かりが消されていて、真っ暗。頼りになるのは、窓から漏れる月明かりと闇に慣れた目。  誰も居ない不自然さから、必死に声を張り上げた。 「ジジイ! 誰かっ!?」  誰の返事もない。  でも、開け放たれたダイニングの方から小さな灯りが漏れている。導かれる様に中へ入った。  並んでいたテーブルや椅子は乱雑に投げ出され、食器も大量に割れている。  それでも、ある人物を見付けて少々ほっとした。  床に置かれたランタンが狭い範囲を照らし、その傍らには小さな老人の背中があった。 「……ジジイ?」 「生きておったか……」  聞き慣れた声で一つ不安が取り除かれ、安堵の息を吐いた。 「ジジイもなっ。よかった……他の猟犬(ハウンド)達は……」  近付いた事によって、暗闇で見えていなかった範囲が見える様になった。思わず足を止める。  床に転がる、非戦闘員二人が突然視界に入ってきた。  どちらもズタズタに斬られた傷があり、首には紅い点が二つ。そこから僅かに血液が流れていた。  二人共、ピクリとも動かない。  絶命した後に血を吸われたんじゃないか。  そうバージルが推測してから、ジジイはおもむろにこちらを振り返った。 「な……!?」  ジジイの口許や髭には、紅い血液がべっとりと付着していた。  あまりにもショッキングな光景で、バージルはすかさずジジイに銃口を向ける。
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