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商業等で栄える都市部から、少し離れた地区。森で覆われたそこには、ある建物があった。
石造りの高い塀で囲まれた、三階建てのレンガ作り。華美な装飾等はされていない簡素な屋敷だ。
そこに住んでいるのは、十四人の男。
その内の三人は、二階の談話室に居た。
三人共、スリーブレスの上に軍服めいた黒いジャケット姿で、一応職業仲間だ。
キャビネット横で壁にもたれ掛かっているのが一人。ソファで向かい合っているのが二人。
チェスをして競ったり、他愛のない話で盛り上がるのが普段のこの場所だ。
そんな憩いの場で、今は話し合いが行われていた。愉しげな雰囲気はない。
二対一の話し合いは、平行線のまま。
ソファに座る長髪の男は、目の前の相手へ悩ましげに笑い掛けた。
「バージル。君が彼を想ってペアを代えないのも、任務に出ないのも気持ちはわかるよ? けれど、もう半年になる。これ以上、No.1の席を空けておくのは……」
「そんな事言うなよエリヤ! あいつの怪我はもう治ってるんだぞ!」
エリヤと向かい合う様に座るバージルは、前のめりになって懇願した。
「今はあんな状態だけどっ、きっと起きたら前みたいに戦える! だからもう少し待ってくれっ!」
「もう使えないだろ」
壁にもたれ掛かる黒髪の男は、冷え切った瞳でバージルを睨んだ。
「シャノン……」
「使えないってなんだよっ!」
エリヤがシャノンを諫めようとしたが、そんな声を掻き消しながらバージルは立ち上がった。
強い怒りを帯びた表情でシャノンに詰め寄り、胸ぐらを掴む。
シャノンは少々遠慮がない物言いをしがちで、義理人情に熱いバージルとはよく揉める。
屋敷内では犬猿の仲だった。
それに、矛先が相棒の事となると、更にバージルの怒りは煽られる。
そんな事、シャノンはお構いなしで。真っ向に対立し、冷静な口調で言い分を述べ始めた。
「あの状態になってもう半年だ。筋力も落ちているし、いつ起きるかもわからない。起きたとしても、使える様になるまでまた時間が必要になる。そんな奴の為にNo.1の席を空けておける訳ないだろ」
「てめぇっ!」
「バージル、待って! 落ち着いて欲しいっ!」
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