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以前、吸血鬼に関する書物をレックスが勉強の為に読んでいた。
その書物は、二百年以上前の事を記したもの。一人の吸血鬼について深く書かれていた様で、名前は聞いた事があった。
それがアルカード・ブラムだ。
恐れ戦くバージルに反し、アルカードは呑気に呟いた。
「当然、猟犬なら儂の名は知っておるか。純血種となると、名が残る者は限られてくるからのう」
「マジかよっ……今日はなんなんだよっ」
身体を震わせたバージルは、力が抜けた様に床へ座り込み、絶望した。
「レックスを病院へ送るって決めて、寝た途端にあいつが死んでっ、俺が刺したみたいになっててっ。疑われて眠らされた後、今度は吸血鬼に仲間が殺されるとかっ……」
膝の上で拳を強く握り、それを膝に何度も叩き付けるバージル。
泣きながら、怒りと悲しみを爆発させる。そうするしかやりようがなかった。
「しかも最後がっ! 話し相手のジジイが吸血鬼だったってなんだよっ! なんでこんな事したんだよっ!」
「落ち着け……」
「落ち着ける訳ねぇだろっ!」
冷静過ぎるアルカードに腹を立てながら、バージルは生きる気力を失い始めた。
「もう頭おかしくなりそうだよっ……純血種の吸血鬼なんて俺に殺せる訳ねぇしっ。しかもジジイって……」
「やれやれ……老人の話は最後までちゃんと聞け。レックスを殺したのも、この子等を殺したのも儂じゃない」
今更、信じられる筈がない。けど、次の言葉は流せなかった。
「お前さんの相棒を殺したのは、儂の血ではあるがな」
項垂れていたバージルは、驚きで顔を上げた。
「は……?」
突然の事で、頭がうまく機能しない。
「どういうことだよ……」
「おそらく、誰かが眠っていたレックスに儂の血を飲ませたんじゃ。その証拠に、健康診断で採取された血液は失くなっていた。レックスからも、微かに儂の血の匂いがした。飲ませてみたものの、適合せずにそのまま死んでしまったからナイフを刺したんじゃろう。しかし……」
気難しそうに眉をひそめたアルカードは、とても残念そうに告げた。
「まさか、お前さん達の中に仲間殺しが居るとはな……」
「えっ……」
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