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おかしいとは思っていた。
自分がレックスを手に掛ける事は絶対ないし、眠っていた自分がベットに移動していたのも不可解。
考えれば、すぐに出てくる答えではある。
が、仲間がそんな事をする筈ないと、バージルは最初から除外していた。
「いったい何言っ……」
「美味い方の匂いっ!」
次々と告げられた言葉の数々について、問い詰めようとした時。
屋敷内では聞いた事がない、甲高くも耳障りな声が後ろから届いた。
急いで振り返ると、白い肌をした血塗れの男が立っていた。古びた装いで、紅く染まった剣を持っている。
「中級かっ!」
すらすらと人語を話している様子と、まずまずの外見からそう位置付けたバージル。直ぐ様そいつに銃を向けた。
中級の吸血鬼はニタニタと笑い、剣を引き摺りながらゆっくりこちらへ向かってくる。
「久々に大量の血にありつけると思ったら。まさか美味い方も居るとはっ……クククッ」
「美味い方……?」
理解の難しい言葉を再び言われ、怯んだ一瞬。
「今日はついてるっ!」
「っ!?」
俊敏にこちらへ踏み込んできたから慌てて発砲したが、首を捻った相手に軽々とかわされた。
相手との距離は、数センチ程。
間合いに入られ、殺されると思った矢先。バージルの後方から鎖武器が跳び出した。
鎖がしなると、先端の刃物が目の前の吸血鬼に振り下ろされた。相手は一瞬で真っ二つ。
「へっ……」
目の前に居た吸血鬼はバランスを失い、物の様に両側へ倒れた。
唖然とした後、後ろを振り返る。
吸血鬼を切り裂いたらしい銀色の鎖は、アルカードの指へと吸い込まれていった。
指先から血を滴らせている元ジジイは、不愉快そうに床を睨み付けていて。
「まったく。勝手に人の領域に足を踏み入れて、儂の孫同然の者達を殺すとは……これだから今時の吸血鬼は好かん」
全裸の男が、容姿とずれた口調で喋り、同類の男を葬った。
その光景全てが、バージルにとっては異様。
アルカードと瞳が合うと、今度は自分の番だと覚った。
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