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アルカードは悔やみつつ、信じがたい言葉も口にした。
「吸血は百五十年していなかったからのう……力が衰えたジジイには何も出来んかった」
「えっ、百五十年も血吸ってなかったのか!?」
衝撃度の高いまさかの発言にぎょっとする。
一方で、アルカードはどうって事なさそうに平然としていた。
「そうじゃ。人間として死にたかったと言ったじゃろ。その為に血は絶っておったが……この状況ではそうも言っておられん。儂にも責任があるからのう」
百五十年もの間、血を主食とする吸血鬼が吸血衝動に耐えるとは、信じられなかった。
想像は出来ないが、苦行にも思える。
それを容易にやってのけたアルカードにも彼なりの事情がありそうだが、話を聞く暇はない。
自分の話を長くするつもりはなさそうで、アルカードも早々に話を切り上げた。
「それより、早く一階に降りるぞ。下の様子も気になる」
言う通りにしようと思った。
が、視界に入った肌色で、バージルの緊迫感は薄れてきた。
気まずそうに顔を赤らめ、アルカードから目を逸らす。
「……その前にジジイ、服どうにかなんねぇのか」
「む?」
深刻な話をしていても、裸体がちら付けば集中が途切れるし、場も締まらない。
「仕方なかろう……ジジイの時の服は窮屈じゃ。倉庫にでも合うサイズがあれば良いが……」
アルカードはまたクロスを調達し、その場しのぎでそれを腰に巻いた。
常人離れした美しい美貌によって、その姿は神々しく見える。
けれど、バージルはこの男があのジジイだとは未だに信じられず。しばらくは疑いの眼差しで凝視していた。
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