血を吸う意味

5/5
前へ
/109ページ
次へ
 元々ジジイだった彼があんな風になってしまって、バージルの心中はなんとなく複雑。 「バージル」  慣れるまでに時間が掛かりそうだと思っていた時に、アルカードの声がした。軽く振り返る。 「なんだ、終わったのか?」 「あぁ」  アルカードはマルテルを抱き上げて立ち上がると、彼をドアから離れた場所へ再び寝かせた。 「すまないが、儂のサイズの服とマルテルに掛ける布を倉庫から持ってきてくれ。儂は一応、シェルターの中を確認する」 「じゃあ俺も一緒に……」 「いや。お前さんがシェルターへ入れば、嫌でも棺に目が行くじゃろ。今は見ない方がいい」 「あ……そうか」  シェルターには、棺に入ったレックスが保管されている。見れば心が乱れるかもしれないと自分でも思い、声が沈んだ。  切り換えなければと、暗い表情を真面目なものに改める。  しかし、吸血鬼の彼がシェルターに入る事には疑問が湧く。 「じゃあ行くけど……扉に銀の装飾あるのに入れるのか?」 「閉まっていたら容易に触れられないだけで、開いていたらなんの効力もない。それじゃあ、良い布と服を頼むぞ」  アルカードは、真っ暗なシェルターの通路に消えていった。  彼の話を聞いたバージルは納得し、玄関近くの武器庫兼倉庫へと入っていった。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加