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 倉庫にあった棚から木箱を取り出すと、バージルはそれを地面に置いて中を漁った。  中には新品の白いシーツが入っていて、死者に被せるには若干粗末ではあるが他に物がない。  マルテルに対して申し訳なさはあったが、シーツを手にしたバージルは妥協する事にした。 「布はこれで我慢してもらうしかねぇか。服は、まぁ仕方ねぇよな」  視線の先には古びた机。その上に、さっき見付けたアルカード用の服を置いていた。  純血種の吸血鬼に着せるには、あまりにも不謹慎。だが、これからの戦闘等も考えれば、他に動きやすい服はなかった。  それ等を持って廊下に出ると、アルカードは既にシェルターから出てきていた。  倉庫に背を向けて跪き、マルテルの頭を撫でている様子で。  表情はわからない状態だったが、悲しんでいるのは伝わる。  姿が別人みたいで、しかも元は吸血鬼。それでも、さっきの出来事や今の仕草で憎めなくなってきている。  だからか、相手を気遣うみたいに自然と話し掛けていた。 「もう戻ってたのか、シェルターはどうだったんだ?」 「何もなかった……」  こちらを振り返りもせず、アルカードの声には覇気もない。  シェルターの中はそんなに広くもないし、最初から異常が見付かるとも思えなかった。  仕事仲間が亡くなった事がよっぽど堪えたんだと感じ、深く追及する必要もないと判断。  だから倉庫の様子と自分の推測を話し、会話を繋げた。 「そうか、倉庫にも何もなかった。となると……マルテルはシェルターから出ようとした時にたまたま襲われたって事か」  アルカードは立ち上がり、そのままマルテルを見下ろしていた。  横顔は確認出来たが、上の空に思える。 「一応、浴室や食料庫も調べてはみたが誰も居らん。マルテルの血を吸った者は、すぐに屋敷から出たんじゃろう……」  その発言で目的が定まり、バージルは静かに心を燃やした。 「じゃあすぐに外を探すぞ。ぜってぇ逃がさねぇ……」  すぐにでも捜索に行きたいが、頼まれていた事を思い出した。 「あ、その前にこれ。ジジイの服とマルテルに被せるシーツな」 「あぁ、助か……」  やっと顔を合わせられたと思ったら、服を見た途端、アルカードは顔をしかめた。
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