猟犬達の住み処

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 バージルの両肩に手を添えたエリヤは、屈むと目線を合わせた。 「相棒を待つ間、何処かからペアの居ない猟犬(ハウンド)を短期間派遣してもいいし、他のペアにサポートとして付くのもいい。君も大事な戦力だから……早めに任務に復帰する事を考えてみてくれないか?」  優しい口調は、頑なだった心を溶かしていく。  でもそれは、相棒を手放す事を認めていくって事で、バージルは悔しげに顔を歪めた。 「……少し、考えさせてくれ。明日までに答え出すから」 「うん、待ってるよ」  励ましてくれる様な、優しい微笑みをエリヤは浮かべていた。  けれど、バージルは笑みを作る事は出来なかった。  エリヤ達に背を向け、ドアノブに手を掛けた時。背中に嫌いな相手の声が届く。 「いい加減覚悟を決めろ。俺達は命懸けで仕事をしないとならないんだ。いつまでも相棒の事を引き摺ってたら……またお前のせいで次の相棒が傷付くぞ」  一発くらい殴ってもいいと思えたが、シャノンが言っている事は現実になりそうで。 「うるせぇ冷血漢!」  そう怒鳴ると乱暴にドアを閉め、彼の声が届かない様にした。  イライラしながら階段の方を向くと、No.持ちのメンバー数人が心配そうにこちらを見ていた。  でも、今は誰とも話す気にはなれない。そこを通り過ぎて、住人達の部屋が並ぶ三階へ上がった。  両サイドに三つのドアが並ぶ階で、ペアと非戦闘員ごとに部屋が割り振られている。  右側の一番奥にあるドアを開けて中に入ると、バージルは控えめに声を荒らげた。 「お前のせいだからなっ。あいつに嫌味言われたのっ」  乱暴にドアを閉めて、窓際に置かれたベットへ近付く。そして、いつもの様に相手に触れた。  イライラはしているけれど、床擦れ防止の為に慣れた手付きで慎重に寝返りを打たせる。  腕に付いている点滴の針が外れていない事も確認。  その後は、ゆっくり手足の曲げ伸ばしをさせ、相手の身体が固まらない様にする。  バージルが目の前の敵に気を取られ、背後の吸血鬼に気付かなかったから彼はこうなった。  庇って重傷を負った相棒のレックスは、あれから眠り続けている。  それからというもの、バージルは毎日、数時間置きに彼の看病を続けていた。
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