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相手は何も応えてはくれない。それでも、スツールに座って指の曲げ伸ばしをしながら、バージルは話を続ける。
「明日までにって言ったけど……そんなすぐに決めれねぇよ。ここまで悩んだ事も今までなかったし」
相手の肌に刺激を与える様に腕を摩り、昔一緒に孤児院に居た時の事を語った。
「お前が猟犬の適性あるって言われた時、付いて行くのだって即決で決めたんだぞ。お前は他の奴と一緒でも大丈夫だって俺は思ったけど……お前が俺と一緒がいいって言ってくれたからっ」
思い出は、よりバージルを苦しめた。
痩せ細った相手の顔を見て、我慢していたものが溢れてきてしまう。
壊れない様にレックスの手を強く握り締め、バージルは声を振り絞った。
「だからっ……早く起きろよバカっ」
吸血鬼討伐者・猟犬達が住む寄宿舎では、一つの別れが近付いていた。
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