戦わない四人

3/3
前へ
/109ページ
次へ
 今ではここに住む青年達を孫と呼び、皆からはジジイと慕われる存在だ。  バージルも家事をやる様になってからは、ジジイとよく話す様になっていた。  最近は専ら、相棒についての話が多かった。 「それよりも、レックスの事はどうなんじゃ」 「……さぁな」  突然素っ気なくなり、暗い表情で芋の皮を剥き始めたバージル。  そんな彼を一瞥して、ジジイはこの場に居ない二人のフォローを口にした。 「エリヤもシャノンも、お前さんの為に言ったんじゃろ。二人を恨んでやるなよ?」  すると、不満そうにバージルは眉根を寄せ、唇を突き出しながら文句を言った。 「エリヤはそうだろうが、シャノンの野郎はちげぇよ。あいつは本当に冷てぇ奴だよ」  仲の悪い二人をよく知るジジイは、やれやれと息を吐いた。 「シャノンとお前さんはわかり合える筈なんじゃがなぁ」 「んな事ある訳ねぇだろ……一生掛かっても無理だって」 「そうかのぉ……」 「そうだって」  頑なに認めようとはしないから、ジジイは一旦諦めた様で。今度はバージルの手元に目を光らせた。 「……そこ、ちゃんと芽は取るんじゃぞ」 「わかってるよ」  面倒そうに喋るが、ちゃんと言われた通り芽を取るバージル。  相棒の事で気持ちが沈んではいたが、何気ない会話で少しは気が紛れた。  他の若者三人も彼を気に掛け、心を寄り添わせて仕事に励む。  そんな優しい環境に、今のバージルは包まれていた。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加