エイプリルフールなんて大嫌い

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 エイプリルフールって結構残酷だと思う。  ある程度の柔軟さが求められているよね、あれ。  ──異星人が地球を侵略するんだって。  ──月がなくなるらしいよ。  ──宝くじが一億当たった!  こんなわかりやすい嘘ばっかりならいいのに。  微妙にリアルを混ぜて嘘をついてくる。 「遠くへ引っ越すんだ」 「告白されたの」 「両親が離婚するって」  冗談が苦手な私は、都度本気になってしまい、そのたび。 「もお~、冗談だって。今日、エイプリルフールでしょ」  なんて言われたりする。  こっちとしてはたまったもんじゃない。なんで親身になってこっちがダメージ受けなくちゃいけないの?  どこまでが本当でどこまでが嘘なの?  なんでエイプリルフールなんてあるのよ。  どんな本当が混ざっていても、たくさんの嘘が塗りつぶしていく。本当を大事にしたいのに。  ……大っ嫌いだ、エイプリルフールなんて。   せめてもの自衛で、今日は一日中スマホの電源を入れない事にした。  日付が変わると同時に電源を落としたせいで、朝のアラームも鳴らなかった。でも春休み中だから寝坊してもいいもん。  春休み中で本当によかった。  学校がなければ誰にも会わなくていいもんね。  すべてをシャットダウンして、今日は家に引きこもるって決めてたんだ!  中学卒業して部活のしがらみもないし、今年は一番自由かも。  誰もいないリビングで、配信のドラマを観るのもいいかな。  そんな事を考えていた時……  コン、コンッ。  であるこの部屋の窓をノックする音がした。  そんなことする人間は一人しかいない。  知らんぷりしていると、さらにしつこく叩かれる。  コン、コン、コココン、ココココココッ…… 「あーっもう、しつこい!」  たまらずカーテンを開いて窓を開ける。  その先には向かいのベランダで、幼なじみの春希(はるき)がニヤッと笑っていた。
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