第2章ーわがまま淑女に御用心ー

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教室の時計は、午後3時を回ろうとしている。 ミアは天井近くの壁に設置されたそれを眺め、もうすぐ本日の授業の終わりである事を察していた。 「では、本日の授業のまとめとして、先生から質問致します」 教卓の前に立つ女の先生が言い、ミアは直ぐに視線を戻した。 「火、水、土、木、雷。五大属性と呼ばれる魔術以外に、高難度術式を要する別の二つの属性は何ですか?」 言って、先生は生徒を見渡す。 ミアと目が合えば、「では、レオナードさん」とミアを呼ぶ。 「光と空間です」 即座に答えると、「正解」と先生は微笑んだ。 「それに付随して、禁術も多く存在する属性は分かるかしら?」 「、、、闇、ですか?」 「正解。ちゃんと予習している証拠ですね」 微笑む先生に、ミアは嬉しそうに笑みを返す。 先生は視線を動かし、「では、最後にもう一つ」と言う。 「五大属性の応用として、風属性を扱う場合に必要となる術式は?」 誰も答えない。 「この時期ではまだ習わないものね。仕方ない事だけど、予習は大事よ?間違っても良いからーー」 言いかけてまたミアと目が合う。 仕方ないとミアが答えようとすると、「はい」と一人の生徒が手を挙げた。 目を向ければ、サーシャだった。 「えっと、火と水の属性を併用し、温度変化を利用します」 「あら」と先生は笑む。 「正解よ。アルバレストさん。良く分かりましたね」 言葉にサーシャは嬉しそうな顔をする。 それと同時に、チャイムの鐘の音が鳴り響いた。 「授業はここまで。皆さん、レオナードさんやアルバレストさんのように良く予習しておいて下さい。次の授業から、性質変化の術式を中心に勉強していきます」 「はーい」と生徒達は返し、帰り支度を始めていく。 ミアも同じように支度を始めたが、「ミアさん」と呼ばれて振り返る。 そこには、腰まである桃色の髪に、透き通る空色の瞳をした女生徒が立っていた。 ミアは「シャーロット様!」と慌てて立ち上がる。 シャーロットと呼ばれた女生徒は、「フフ」と微笑んで「シャロと呼んでって言ったじゃありませんか」と言う。 ミアは「は、はい」と嬉しそうな笑みを返し、ふと別の視線に気が付く。 シャーロットと呼んだ女生徒の後ろ、身支度を整えたサーシャがこちらを見ていた。 しかし小さく笑むと、直ぐに踵を返して教室を出ていく。 「ミアさん?」 シャーロットに呼ばれてミアはハッと向き直る。 「ごめんなさい。えっと、御用は何でしょう?シャロ様」 言われてシャーロットはムッと頬を膨らませる。 「様もやめてください。お友達になりましょうと話した事、もう忘れたのですか?」 ミアははたと記憶を呼び起こしていく。
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