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スタンは校門の前に立っていた。
校内では鐘の音が響いている。
そろそろ下校の時刻だ。
「よぉ」と声が聞こえ、塀に背を預けていたスタンは視線を向ける。
そこにはカリオンと、見知らぬ男が立っていた。
「交代だ」
カリオンのそれに、スタンは男へと視線をやる。
「ダダンじゃないのか」
言葉に男は「どうもっす!」と元気良く言う。
「こいつはお前が入る少し前に加入した新入りでな。他の護衛をやっているんだが、最近非番が多くて暇を持て余してるんだ」
「あ!って言ってもあれっすよ!要らないって言われてる訳じゃないっすよ!俺の依頼主が最近は護衛の必要が無い案件ばかりだからって言ってましたし!」
聞いてもないのに説明するが、要するにそれは「要らない」と言われているのと同義ではないかとスタンは思った。
カリオンは男の頭をスパンと叩く。
「エディ、いつも言っているが、お前はもう少し落ち着きを持て。俺達は安心を売って金を貰う商売をしている。先ずは喋りから改めろ」
エディと呼ばれた男は、「うっす!」と言ってまた叩かれた。
「いてっ!」と目を瞑るエディに、スタンは小さく笑った。
そして「丁度良い」とスタンは言う。
「今日はミアと買い物でもして帰ろうと約束してたんだ。早めに来てくれて助かった」
それにカリオンは怒った顔をする。
「馬鹿者。そういうのは先に言っておけ。たまたま早く来れたが、本来ならお嬢を送り届けてから交代だったんだ」
「仕事だ。構いはしない。送ってから戻れば良い話だしな」
「妹を待たせておくつもりだったのか?」
「それほど待たせるつもりもない」
「お前は家族優先か仕事優先か分からん奴だな」
スタンがそれに首を捻ると、「妹さんって」とエディが口を開く。
「可愛いっすか!?」
「殺すぞ」
「すんません!」
睨まれた蛙がごとく即謝罪するエディに、カリオンは呆れた視線を向ける。
「兎に角、妹が来たらお前は行け。明日もダダンが護衛に付くから心配するな」
「、、、いや、敵の正体がつかめるまでは休むつもりはない」
「馬鹿者。休息は必要な事だ。いざという時に疲労が溜まっていればまともに動けないだろ」
「案ずるな。睡眠をとらなくても三日は最大限のパフォーマンスが出来るよう訓練している」
「そういう話をしてるんじゃない」
スタンにも呆れるカリオンだが、エディがポカンと口を開けている。
「休み無しで良いとか、この人本当に冒険者っすか?」
「残念ながらな。だが、お前のように楽がしたいから冒険者になる奴も早々いない」
またスパンと頭を叩かれ、「だって、自由出勤できるし」と返しもう一度叩かれた。
その時、建物の中からゾロゾロと学生が出てきた。
「明日は休め。これは上司命令だ。残業代が嵩むと姉さんから叱られる」
有無を言わせずにカリオンが言うので、スタンは「分かった」と答えるしか出来なかった。
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