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スタンとミアはダレンストリートへ訪れていた。
この時間帯は学生で溢れているらしく、その道は制服を着た若者で溢れていた。
「お兄ちゃん。良かったの?」
隣を歩くミアが尋ねる。
「何の話だ?」
問い返せば、「サーシャさんの護衛の仕事だよ」と言う。
「問題ない、、、はずだ」
答えにミアはスタンの前に出て立ち止まり、大きく体を傾けて顔を覗き込んできた。
スタンが立ち止まると、「何だか、らしくないね」と言う。
「何がらしくないんだ?」
「うーん。上手く言えないけど、お兄ちゃんがうちに来た時はもっと自信に満ちてたというか」
スタンが首を傾げると、ミアは腕組みをして胸を張る。
「自信ではない。これは事実だ」
「、、、俺の真似か?」
「似てた?」
スタンは「恐らく」と笑う。
スタンはそうして、難しい顔をした。
「踏み込む度合いが分からない」
「どういう事?」
「昔は依頼主と関わる事はほとんど無かったし、仲間とも作戦の打ち合わせ以外では関わりを持たなかった。必要が無かったと言い換えても良い」
「それで?」
「護衛、、、守る事がこれほど難しいとは思わなかった。攻め手の方が何倍も楽だ」
ミアは腕組みをしたまま「うーん」と首を大きく傾ける。
「良く分からないけど、相手も嫌なら嫌って言うだろうし、気にしなくて良いんじゃないかな?」
「だが、仕事だ。プライベートまで侵害されたくはないだろう?」
ミアは漸く理解に至ったのか、「人によるよ」と笑う。
「私は嬉しかったよ?」
言うと、ミアは自分の着用している制服を自信満々に見せる。
「来た日にお兄ちゃんが付与術式を縫い込んでくれたの。守られてる気がして、嬉しかったよ?」
スタンはふと、初日の夜にアイズと話した事を思い出す。
「、、、そうか?」
「うん」
微笑むミアに、スタンも笑みを返した。
小さくはあるかもしれないが、信頼という物を得ている。
そんな気がした。
「ミア。明日の事だがーー」
「仕事でしょ?良いよ」
「ーー良いのか?」
「うん」とミア。
「おじ様も突然呼び出し受けたりするし、それで慣れてる。でも、おじ様もお兄ちゃんも、ちゃんと埋め合わせはしてくれる。でしょ?」
「それは勿論だ」
「なら、何も問題ないよ」
ミアは「あっ」と思い出したように腕組みをして、「ならば、良し」と言い直した。
それを見て、スタンは小さく吹き出してしまう。
得意気にミアはスタンを見る。
「今のは誇張し過ぎだ」
スタンが言えば、「あ、やっぱり?」とミアも笑った。
その時だった。
『ーースタン』
スタンの頭の中に響く声。
念話だとスタンは右手で頭に触れる。
声の主はカリオンであった。
「どうした?」
『すまない。本当にすまない』
声が苦痛に歪んで聞こえる。
「何かあったのか?」
いぶかしむスタンの表情に、ミアは首を捻った。
『お嬢が、、、誘拐された』
言葉に、スタンは目を見張った。
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