第2章ーわがまま淑女に御用心ー

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スタンとミアはダレンストリートへ訪れていた。 この時間帯は学生で溢れているらしく、その道は制服を着た若者で溢れていた。 「お兄ちゃん。良かったの?」 隣を歩くミアが尋ねる。 「何の話だ?」 問い返せば、「サーシャさんの護衛の仕事だよ」と言う。 「問題ない、、、はずだ」 答えにミアはスタンの前に出て立ち止まり、大きく体を傾けて顔を覗き込んできた。 スタンが立ち止まると、「何だか、らしくないね」と言う。 「何がらしくないんだ?」 「うーん。上手く言えないけど、お兄ちゃんがうちに来た時はもっと自信に満ちてたというか」 スタンが首を傾げると、ミアは腕組みをして胸を張る。 「自信ではない。これは事実だ」 「、、、俺の真似か?」 「似てた?」 スタンは「恐らく」と笑う。 スタンはそうして、難しい顔をした。 「踏み込む度合いが分からない」 「どういう事?」 「昔は依頼主と関わる事はほとんど無かったし、仲間とも作戦の打ち合わせ以外では関わりを持たなかった。必要が無かったと言い換えても良い」 「それで?」 「護衛、、、守る事がこれほど難しいとは思わなかった。攻め手の方が何倍も楽だ」 ミアは腕組みをしたまま「うーん」と首を大きく傾ける。 「良く分からないけど、相手も嫌なら嫌って言うだろうし、気にしなくて良いんじゃないかな?」 「だが、仕事だ。プライベートまで侵害されたくはないだろう?」 ミアは漸く理解に至ったのか、「人によるよ」と笑う。 「私は嬉しかったよ?」 言うと、ミアは自分の着用している制服を自信満々に見せる。 「来た日にお兄ちゃんが付与術式を縫い込んでくれたの。守られてる気がして、嬉しかったよ?」 スタンはふと、初日の夜にアイズと話した事を思い出す。 「、、、そうか?」 「うん」 微笑むミアに、スタンも笑みを返した。 小さくはあるかもしれないが、信頼という物を得ている。 そんな気がした。 「ミア。明日の事だがーー」 「仕事でしょ?良いよ」 「ーー良いのか?」 「うん」とミア。 「おじ様も突然呼び出し受けたりするし、それで慣れてる。でも、おじ様もお兄ちゃんも、ちゃんと埋め合わせはしてくれる。でしょ?」 「それは勿論だ」 「なら、何も問題ないよ」 ミアは「あっ」と思い出したように腕組みをして、「ならば、良し」と言い直した。 それを見て、スタンは小さく吹き出してしまう。 得意気にミアはスタンを見る。 「今のは誇張し過ぎだ」 スタンが言えば、「あ、やっぱり?」とミアも笑った。 その時だった。 『ーースタン』 スタンの頭の中に響く声。 念話だとスタンは右手で頭に触れる。 声の主はカリオンであった。 「どうした?」 『すまない。本当にすまない』 声が苦痛に歪んで聞こえる。 「何かあったのか?」 いぶかしむスタンの表情に、ミアは首を捻った。 『お嬢が、、、誘拐された』 言葉に、スタンは目を見張った。
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