第2章ーわがまま淑女に御用心ー

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念話が切れてから明らかに動揺しているスタンに、ミアは眉を寄せていた。 「お兄ちゃん?大丈夫?」 問い掛けにハッとして、スタンはミアを見る。 「すまん。予定が出来てしまった」 「え?今の念話?」 「そうだ」 「えっと、、、」 内容は不明であるが、「捜索」という単語にただならぬ物を感じる。 はたと思うのは、サーシャの事。 「もしかして、サーシャに何かあった?」 スタンは視線を逸らす。 それは明らかな肯定であった。 故に溜め息。 ミアの仕草にスタンは慌てる。 「ミア。約束を反故にしてしまう事は謝罪する。しかしーー」 「何してるの!」 ミアの剣幕にスタンは目を丸くする。 「早く行って!私の事なんて気にしちゃダメだよ!!」 「ミア?良いのか?」 「良いも何もないでしょ!良く知らないけど、大変な事になってるんでしょ!?」 「埋め合わせはーー」 「埋め合わせなんてどうでも良いから!早く行って助けてあげて!!」 怒るように言うので、スタンは慌てた顔から真面目なそれへと変じる。 するとミアは笑みを見せる。 「ちゃんと助けて来てね。お兄ちゃん」 「あぁ、その約束は必ず守る」 ミアが「うん」と頷いて視線を上げた時には、目の前に居たはずのスタンは忽然と消えていた。 ミアは追う訳もなく空を見る。 赤みがかった空に、一瞬だけスタンの背が見えた気がした。 錯覚であると理解しても、何故か不安はない。 「頑張れ。お兄ちゃん」 誰にでもなく呟くと、また笑みを浮かべて歩き出した。
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