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スタンの中で幾度も疑問が浮かんでは消え、混迷が深まるばかりだ。
「互いにやるべき事をやった。何処にも落ち度はない」
言ってしかし、と視線を落とす。
「いや、落ち度があるとするならば、狙われていると分かっていながら危険性を考慮せず、休暇を選択した俺にある」
スタンの言葉に、ダダンは「バカヤロウ」と小さく返す。
「お前は俺達を信頼して休みを取ったんだ。その信頼を俺達が裏切って、そんで、結局お前に頼ってしまった」
ダダンは強く歯を食いしばる。
「大人のくせして、まだガキのお前に頼るしか出来なかった。すまねぇ」
ダダンは腕の力を強くして、「本当にすまねぇ」と慟哭めいた声を溢す。
「違う」とスタン。
ダダンの腕を掴むと、己から離す。
「適材適所という言葉がある」
スタンの脳裏に浮かぶのは、アイズの姿。
彼は戦闘を得意としておらず、けれどもスタンには長老に匹敵する強さを感じた。
その理由は明白で、彼の物怖じしない態度と気迫、戦いにおいてのスタンスと、そして減らず口だ。
王都に来るまでの道中で、彼は幾度も喧嘩の仲裁をしてみせた。
力で制圧するのではなく、対話で全てを解決へと導いた。
暴力のみが力の全てではないのだとスタンはアイズを見て学んだ。
その時は分からず思考の片隅に放置していたが、今なら少しだけ理解が及ぶ。
「俺は戦闘に長けているが、心というものはまだ良く分からない。俺では本当の意味でお嬢様を安心させてやれない」
己が到着し安堵させてもなお、サーシャの恐怖は消えなかった。
その恐怖を排除してもなお、サーシャの目は不安で満たされていた。
「俺では敵を排除する事は出来ても、安心を与える事は出来ない」
言うと、ダダンはキョトンとした目を向けていた。
「だから適材適所か?」
「あぁ、ここまでは俺の仕事だ。だから、ここからお嬢様の心を救うのはお前達の仕事だ」
沈黙が流れた。
数秒して、ダダンが吹き出した。
「お前さんはズレてるなぁ。相変わらず」
笑いながら言うので、「なに?」とスタンは首を傾げる。
「安心なら、お前さんが居るだけで与えられてるさ。俺達にも、お嬢にも」
「そうか?」
「そうだよ」
ダダンはスタンの頭を強く撫でる。
驚いて目をしばたたかせるスタンだが、嫌な気はしなかった。
「ったく、お前はすげぇよ」
「何の話だ?」
ダダンはニッと笑むと、「何でもねぇ」と手を下ろして背を向ける。
「、、、変わってくれるなよ。スタン。てまぇはそのままでいろ」
言葉を吐いて歩き出す。
その方向には、着替えを済ませたサーシャが向かってきているのが見えた。
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