序章ーある1つの定義ー

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アイズははたと気付いていく。 異常性。 生き死にが日常で、任務が絶対で、忠実にそれを遂行する為己の技術を磨いてきた。 他の全てを切り落とし、鋭利に貫く事のみを特化させてきた人間兵器。 その異常性故に誰もが誤解し、その異常性に興味を持ったアイズだからこそ気付いていく。 スタンは、まだ歴とした子供だ。 感性豊かな思春期の少年が、全てを失った喪失感と共にある。 無知な子供なのだとしたら、己を苦しめている正体を教えられていない子供なのだとしたら、全ての行動と言動に理解が及ぶ。 「スタン。やはり私と共に来い」 言われてスタンは視線をアイズへ戻す。 「最初は興味本位で、次は気に入ったからで、でも今は違う」 アイズはスタンが出会った中で誰よりも優しい微笑みを携え、「君を育てたくなった」と言う。 スタンは俯き、断りの文句を吐こうとする。 だがそれは「三年でいい」とアイズに遮られた。 「三年、私に育てさせてくれ。やりたい事は自分で探してくれて良い。場所は私が必ず提供する。見返りは、そうだな」 アイズは「フム」と右手を顎に当て、思い付いたように頷いた。 「三年後、君の望むモノを何でも一つ用意しよう。金でも、人でも、兎に角何でもだ」 「、、、本気で言っているのか?」 疑念の目を向けるスタンに、アイズは微笑みを絶やさず頷いて返す。 「私は口八丁と方便は好きだが、嘘はこの世で一番憎んでいる」 「俺が『爺ちゃん』って言ったらどうするんだ?『烏合』と言ったら?」 「どうにかして用意しよう。幸い知り合いは多い。先ずは『死霊術師(ネクロマンサー)』に相談する所から始めるとしよう」 回答に沈黙し、次にスタンは吹き出した。 あまりに笑うので、アイズも笑う。 「"あんた"、どうかしてるだろ」 まだ笑うスタンに、アイズはもう一押しと口を開く。 「家族、、、と言ったな。その"答え"はすまないが、教える事は出来ない。仲間も同様、その胸の苦しさも、教えてやる事は出来ない」 知識として教える事はできても、それでは何の意味も持たない。 「でもな。"それを探す方法"なら教えてやれる」 自分で見つけなければ、何の意味も持たないのだ。 アイズは右手を差し出す。 「私と来い。スタン」 スタンはその手を見つめる。 どうすべきか悩みながらも、自分でも不思議であったが、気付けば握り返していた。 「こんな勧誘を受けたのは初めてだ」 その手は何故かとても暖かく、スタンは知らない事がまた一つ増えたと思った。 そんなスタンを知ってか知らずか、アイズは嬉しそうにまた笑む。 「安心しろ。私も初めてだ」 その笑顔はやはり、スタンの歴史上類を見ない程優しいものだった。
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