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「里を完全包囲し、『烏合』の民とあればそれが女子供であろうと殺害の対象とする。逃げ道を塞いで、戦う意思の無い者までも殺すなんて、ただの虐殺じゃないですか」
怒りを露にしたエリーの瞳をアイズは逸らさずに見つめ返す。
そうしてゆっくり、目を閉じた。
「、、、綺麗事じゃ飯は食えないからな」
「だとしても、戦闘員以外は見逃しても良いんじゃないですか?」
問いかけにアイズは閉口する。
目を開き、「私が嫌いになったか?」と問いを返した。
「そんな話はしてません。逸らさないでください」
先程とは違う剣幕の怒りに、アイズは俯いて息を深く漏らす。
「たぶん、怖いのだろうな」
「、、、怖い?」
「三大国とまで呼ばれる国々が、連合してまで討伐隊を組織した。情報収集や暗殺に特化した『烏合』を驚異認定するのまでは理解できるが、討伐対象とするまでの期間の短さには納得できない」
アイズが顔を上げると、肩まである銀髪が揺れて靡く。
「私達の知る由も無い機密情報を入手したのか、はたまた要人暗殺を一度も未遂で終わらせない彼等を危険視したのか理由は定かではないが、少なくとも分かるのは、我らが王国を含めた三大国とも上が彼等に恐怖したという事実だ」
言いながら、アイズは苦虫を噛み潰したような顔で目を細くする。
「じゃなきゃ、「誰一人として生かすな」という命令は下りてこないだろう?」
問いに、エリーは押し黙る。
返せる言葉を持ち合わせていなかったからだ。
故に頷く他なかった。
「怖いから全員殺せなんて宣った。不安分子を残したくないのさ。失うモノを持たない奴等の復讐ほど恐ろしいモノはないからなぁ」
「だけどーー」
「エリーゼ・ポートマン中尉」
それでも得心のいかないエリーの無闇な返しをアイズは遮る。
「私達は軍人だ。カラスがいくら真っ黒であろうと、上が白と言えば白くしなければならないのが軍人だ。理解は出来るね?」
「、、、はい」
「愚痴も叱責も非難も後でいくらでも聞いてやる。だから、今は何も言うな。外には公国や帝国の人間も居るんだ。何処で誰が聞いているか分からん」
「、、、はい」
「申し訳ありません」と頭を下げるエリーに、アイズは「よろしい」と微笑む。
「まぁ、今はそれで納得してくれ。心配せずとも、全ての責任は【討伐隊作戦本部統括】の私にある」
重々しい言葉ながら、茶目っ気たっぷりにウインクをして見せるアイズ。
エリーはその様を前に項垂れる。
真面目に話していたこちらが馬鹿のようだ。
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