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「それで結局、この時間まで中央区から西区に東区とお嬢につれ回されたのか?」
ギルド『グリムソード』。
一階の受付のある酒場にて、一角の席にスタンとダダン、カリオンとミリアムは座っていた。
時刻はもう夜の八時を迎えようとしている。
「あぁ、門限は六時と聞いていたから流石に焦りはしたな。速度を上げるとあの女、、、お嬢様に怒られるし」
スタンのそれにミリアムは「それは災難でしたね」と言いつつ、カラカラ笑っている。
「面談に行くとは聞いていたが、即日に採用され、克つそのまま勤務とはな。御苦労だった」
カリオンに背中を擦られ、「いや、俺としては妹の件が一つ片付きそうで、助かった」と笑む。
「しかし飛行術式も使えるとはな。益々底の見えないガキだな。お前は」
カリオンが言うと、「ミリアム。お前も使えるんだろ?」とダダン。
「えぇまぁ、でも魔力効率も悪いですから、早々使わないですね。やるなら短時間の身体強化を連続して障壁を足場にーー」
「魔術理論はやめろ。そんなもん俺達凡人には飛行術式と変わらねぇっつうの」
遮られてミリアムは「えー」とスタンを見る。
「スタンさんなら分かってくれますよね?」
「そうだな。戦闘ならその方が速度も出せる。相手を撹乱するには良い戦法だ」
「ほらぁ」とミリアム。
ダダンは呆れたように視線を逸らして見せた。
会話が途切れたので、「しかし」とカリオンが口を開く。
「スタン。今日は飯も食えるんだろう?」
「あぁ、少々難儀したが、家族には外で食べてくると連絡はした」
カリオンは頷いて、今度はミリアムへ視線を向ける。
「お前も来るなど、珍しい事もあるものだ」
「紹介者としては、一応の筋は通さなきゃいけませんからね。スタンさんのお仕事も決まりましたし、今後は依頼も受けるでしょうし、前祝いみたいなものです」
「本当か?ギルドには別件で来たんだろう?」
「まぁ、今度の討伐依頼の件で、Sランクの会議はありましたけど、、、」
言って、「僕だってそんな、薄情な訳じゃないですよ」と声音を落とす。
「まぁそんなもん、ついでだろうが何だって良いじゃねぇか」
ダダンが言う。
「なかなかねぇ機会なんだ。親睦会って事にしようぜ」
笑って続けるので、「そうだな」とカリオンも笑んだ。
スタンはそのカリオンのギプスへと目を向ける。
「そういえば、完治までどれくらいかかる?あの女、、、お嬢様に聞けと言われてな」
「ん?そうだな。医者からはあと一週間ほどと言われた。折れた骨はもうくっついているそうだ。安心しろ」
「、、、そうか」
「お!んじゃあカリオンのくっついた祝いも兼ねて、パーっとやるか!ミリアムの奢りで」
ダダンが言って、「え!?僕ですか!?」とミリアムが驚く。
「何だそれは」とカリオンも呆れて、皆の笑い声が木霊する。
スタンはふと思う。
ーーこういう日常も、悪くないものだな。
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